ビブラートを利用した3度の重音の練習

■バイオリンの3度の重音はなぜ難しいか

3度、6度、オクターブなど、バイオリンの重音奏法にはいろいろな種類があるのですが、極度に手を拡げる10度を除けば、3度の重音が最も難しいと言えるでしょう。
この理由は
過去の記事:重音に取り組む順番(3度、6度、オクターブ・・・など)
に「指、もしくは手全体に力が入ってしまい、強ばってしまう」と書きました。

3度の重音を演奏する際に、左手に必要以上に力が入ってしまうのは、なぜでしょうか。

それは、日常生活において、「人差し指や中指を折りたたみ、薬指や小指をのばす」という指の形を作ることがほとんどないということが関係していると、私は考えています。
日常生活での経験がないにもかかわらず、3度の重音ではこのような動作を要求されるわけです。
これが、バイオリンの演奏の中でも3度の重音が難しいと言われる理由です。
そして実際の曲の演奏では、ただ押さえるだけではなく1−3と2−4の組み合わせで細かく動き回るのですから、取り組みにくいのは当然ですね。

話を日常生活の例に戻し、例えば丸いペットボトルを横から持つ時などを想像してみましょう。
五本の指の均等な力でペットボトルを持っているように思えるかもしれませんが、比較的、人差し指や中指よりも薬指や小指に軽く力を入れ、保持している場合が多いと思います。

利き手でない手のケースをイメージしたいという場合は、スマートフォンを操作するときのことを考えてみてください。
おそらく、スマートフォンを持っている手の指のうち、親指の対向で指を曲げて支えているのは薬指と小指のはずです。

これらはほんの少しの例ですが、いずれにしろバイオリンで3度の重音を弾くときの指の形は、利き手、利き手と反対の手のどちらにしても、あまり日常生活で出てこないのです。

そのため、3度の重音を弾く時に不慣れな指の形を作ることになり、手が強ばってしまうのです。
練習を重ねて手が正しい形を覚えれば、これは解決はされるのですが、ガチガチに力が入った状態を覚えては無意味、もしくは逆効果です。
そのため、重音の練習の際に左手が力み過ぎていないか、ビブラートを使って確認していきましょう。

(注意)これは、左手とその指が力んでいるとビブラートはかけられない、ということを利用した練習方法です。適切なビブラートのかけ方を習得している中級者向けの方法になります。
特に、痙攣するようなビブラートに慣れてしまっている方の場合は、まずビブラートのかけ方について検討する必要があります。

■ビブラートを使って3度の重音の弾き方をチェック

練習の仕方は、次の2つのステップの繰り返しです。

・ビブラートをかけずに3度の重音を弾いて正確にハモっていることを確認
・続いて同じ音をビブラートをかけて演奏し、指や手が力んでいないことを確認

最も単純な譜例は、このようになります。
テンポの指示はありませんが、Andanteのテンポ、四分音符=66程度でゆっくり練習してください。

thirdsvibex1

もしくは、

thirdsvibex2

これは、D線、A線のファーストポジションで、1−3、2−4の組み合わせで3度を取る例です。
どちらの譜例で練習した場合も、
・ハーモニーを確認
その後、
・力んでいないかの確認
という流れです。

単音で演奏する時と同じようにビブラートがかかれば、不必要な力が入っていない、という証拠です。
逆に、手が固まってビブラートがかけられないようであれば、それは力が入りすぎだということです。
ハモりを確認した音程はそのままで、「弦に指が触れる程度」を意識して弦を押さえてみましょう。

もちろん、実際には触れるだけではいけませんが、ガチガチに押さえた状態から力を抜く練習をするより、触れるぐらいの力加減からどのぐらいの力を込めればいいのかと考えた方がうまくいきます。

3度の重音によるスケールや具体的な曲の練習も重要ですが、まずはこのファーストポジションの2つのパターン(1−3と2−4)について形を整えることが基本です。
この考え方は、以前の記事と変わりません。

初めから力加減をコントロールし、適切な力で弦を押さえるというのは、3度の重音においてはとても難しいです。
このビブラートによるチェックや練習を重ね、自然かつ適切な指の形を覚えていきましょう。